全国重症児者デイサービス・ネットワークの「災害」に関するスキルアップ研修に参加しました。
スピーカーは、
福島県いわき市「NPO法人ままはーと」理事長 笹間真紀さん
5人の息子さんがいて、そのうちの1人が重症児です。
台風19号で被災し,その経験から講義を行なってくれました。
水害にあった多機能型重症心身障がい児デイサービス「どりーむず」の被災状況や臨時運営時の様子は、
医療法人医和生会 内山クリニック
被災した重心児家族のためにも・全国から支援を受け「どりーむず」臨時運営
をご覧ください。
災害時
避難所へはいかなかった
「どりーむず」も自宅も水害にあってしまい、被災当日は高台に避難した車中で過ごしたそうです。
重症児が過ごすスペースの確保が難しい
たくさんの機器があるため電源の確保が難しい
呼吸器合併症を起こしやすいので衛生面も心配
褥瘡ができないようにマットレスが必要
おむつ交換が必須
などなど、避難所で大勢と共に過ごすには課題が多く、気を遣いすぎてお互いに嫌な思いをするくらいなら自分で頑張ろうと思ったと話されていました。
以前、熊本地震や西日本豪雨での経験から災害と障害を考える講演会を聞きに行った際にも、避難所の問題は指摘されていました。
災害時に、障害児者が避難する場がないのが、日本の避難所の現状です。
被災後
重症児の息子は、ショートステイ
水害にあった場所は、不衛生。
泥水が乾燥し始めると、空気中に浮遊します。
呼吸器合併症を起こしやすい子供がそのような環境にいるのは安全ではないため、健常児の息子たちは友人宅へ、重症児はショートステイへ、預けて作業をしたとのことでした。
ショートステイも、重症児を突然預かってくれるところが容易に見つかるわけではありません。
笹間さんの場合は、数年前から掛け合い、ショートステイをするための練習を開始していた頃の被災であっため、非常事態だということで急遽対応してもらうことができました。
災害時に頼れる人・頼れるところ、ショートステイで利用できるところを、平常時に関係構築していることが大事だとお話しされていました。
ボランティア
汚染した室内の片付けにはマンパワーが必要になります。
他施設や他県からもボランティアが来てくれて、本当に助かったとお話しされていました。
現場での作業のみならず、支援物資や送迎車の寄付、子供たちの預かりなど、たくさんの人によって復旧作業を進められました。
パソコンを避難していてよかった!
事業所が被災しても、請求業務の時期がやってきます。
請求業務ができないと、その月の収益がなくなってしまうことになります。
台風での水害であり、時間的猶予があったため、請求業務をするパソコンは2階へ避難させることができていたそうです。
また、万が一に備えて、クラウド上にバックアップを取ることの大切さも実感したとお話しされていました。
「平常時にできないことは、災害時にもできない」
避難所へ行かなかった際に、
近所の人から「障害をもった子がいるあの家族は大丈夫かな」と思ってもらえなかったことから、地域に溶け込んだ生活をしていなかった、一番身近な小さな地域のコミュニティーとの関わりができていなかったと、気付いたそうです。
障害をもって暮らしている子供の生活を知ってもらうことを、平常時にもっとしていれば、もう少し地域のみなさんに甘えてもよかったのかもしれないと、今になって思うとのことでした。
人と人との繋がり、人と人との関わりは、災害時だから急にできるわけではありません。
平常時にできないことは、災害時にもできない。
平常時から、災害時に地域住民から気にかけてもらえるような関係構築が重要ですね。
私自身は、大学の卒業研究で、地域で暮らす身体障がい者の防災意識についての論文を書きましたが、文献検索していても同様に地域住民との人間関係構築が重要であるというものが多くありました。
また、北海道の大停電時の経験をインタビューさせていただいたときにも、重要ポイントとなっていました。
重症児デイサービスとしての災害対策
連絡体制
緊急時連絡網も活用したが、LINEグループで随時情報共有をした。
利用児の家族への連絡も、普段からオフィシャルLINEを使用しているので、LINEを活用できた。
蓄電器・発電機
水没してしまうと使えなくなってしまうので、早めに2階へ避難させるべき。
ガスボンベで動くタイプは、900Wまでしか使えない。
ガソリンを使うタイプは、W数は良いが、ガソリンの管理が難しい。
近くのガソリンスタンドに、災害時には供給してもらえるようお願いするようにした。
インバーターを使用した方が医療機器には良い。
個別支援計画に災害対策も盛り込んだ
個別支援計画に、「災害時に安全に避難することができる」という項目を立てるようにした。
家で被災した場合に、誰を頼るのか、どこに避難するのか、どんな備えが必要なのかを具体的に考えてもらい、また、利用児や家族の状況や住居が変わっていることもあるので、個別支援計画の更新のたびに、見直す機会にもなっている。
更新のタイミングで、デイサービスに保管している栄養の備蓄を返却し、賞味期限や食事形態を確認して新たなものを持ってきてもらうようにした。
子供たちが楽しく参加できる避難訓練
緊急的に避難する避難訓練だけではなく、
障害児は聞き慣れない音などに敏感になったりもするので、発電機や蓄電器を使用した調理実習を行い、スタッフも使用できるよう経験しておく。
子供は、普段食べていないものを、災害時だからといって食べてくれないこともあるため、「こういう食べ物もある」ということをわかってもらうために、備蓄食品を食べてみる日を設けるようにした。
また、水害時には、地形が頭に入っていないと通れないということもあるので、水没しやすい地域の把握や、実際にバギーを押して歩いて避難場所まで行ってみるという避難訓練を行なっている。
これを行うことで、例えば、途中で吸引が必要になったときに、「もう少し行ったら広い場所があるから、そこでみんなで止まって吸引使用」という判断もできるようになるなど、安全確保にもつながるとのことだった。
仮店舗でも少しでも早くデイサービスを開いた
水害時は、被災地域の近辺でも全く被災せず日常生活を送ることができる地域もある状況であったため、被災した子供を優先的にお預かりできるように調整したそうです。
災害後の復旧作業では、マンパワーが必要であり、人手がない中で重症児をみながらの作業はかなり大変な状況となる。
子供を預けた状態で、被災した家の片付けをしてもらえるように、他の利用児のご家族にもご理解をいただいて、被災した子供を優先的にお預かりしていました。
また、ボランティアに来てくれた方と職員でチームを作り、被災した利用児の家の手伝いにも行ったそうです。
「うちは大丈夫だから、他の方に」と遠慮してしまうお母さんも多くいたようで、普段から迷惑をかけちゃいけないと思ってしまうことが癖づいてしまっているようです。
「助けて」って言えることも大事だよと、いつも他者には言っているのに、自分自身も言えずに、被災当日は家族だけで車中泊をしていたので、もっと甘えればよかったと今は思うと話されていました。
まとめ
災害を経験した方は、このように実体験から具体的に対策を講じ、またその経験を発信してくれています。
しかし、その発信を他人事として捉え、災害時の備えとして活かさないでいると、同じことを繰り返してしまいます。
災害は、いつどこで発生するか分からないので、平常時に、被災した経験から情報発信してくれている方から具体策を学び、実際に災害対策として取り入れていくことが重要であると考えます。
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