「ラストピースマネジメント〜介護職のためのエンタメ小説〜」/外川大由/星雲社

気ままなコラム

「ラストピースマネジメント〜介護職のためのエンタメ小説〜」
前任者の退職に伴い、急に主任になったカズの物語。
どの場面も、介護の現場で「よくあるよね」「こんな経験したことある」ということばかり。
だからこそ、この本を読むと、介護の現場で起こることを客観視して分析することができると思います。

中間管理職はなぜ苦しいのか

平スタッフから中間管理職になったとき、それまでと同じ考え方ではうまくいかない。
これは、介護職に限らず、すべての仕事でも言えることですよね。
この本では、中間管理職がなぜ苦しいのかを、大きく2つの要因に分けて書かれています。
・中間管理職は板挟みになる
・仕事をこなすことはできるけれど、管理職だなんて無理
こう考える人も多いのでは。
これを、わかりやすく分解してくれているので、「なるほど確かに!」でした。

なぜ人手不足がずっと続くのか

仕事に限らず、何かでミスをしたときに、自己否定に陥る人が多い。

私自身は看護師なのですが、看護師も仕事でミスをしたり、インシデントレポートを書いた時には、自己否定して「看護師向いていない」という思考回路になる人が多いように思います。
私自身も新人の頃はそうでした。

しかし、ミスをしたのは仕事であって、自分自身を否定する必要はないのです。
そして、そのミスが、自分であっても、他人であっても、ミスをしたという事実やそれに対する原因究明や解決策を考えることは必要であるが、人物を否定してはいけない。

医療介護の現場では、「仕事のミス=人格否定」という雰囲気になっている場合が多い。
そしてその雰囲気により、退職者が後を経たず、人手不足が一向に解決しない現場も多い。

この問題を解決するための考え方は、この本を読むと「そりゃそうだな」ってなると思います。

組織マネジメントは子育てと似ている

組織のマネジメントを考える時に、理念の共有やシステム化を重視する人が多い。
もちろんそれも重要なことであるが、それを成り立たせるためにも、一番根底に構築すべき大事なことがある。
これを、発端となった出来事とともに「マザー&ファザー理論」と紹介している。

マザー理論を実践する方法は、日本人には馴染みがなく抵抗のある人もいるかもしれない。
しかし、自己啓発や自己肯定感UPなどのセミナーや本ではよく用いられている方法でもある。
それを、介護の現場でも実践できる内容で紹介しています。
ファザー理論は、価値観の共有のための「クレド」を用いている。
スタッフのためでもあり、リーダーのためでもある「クレド」は、他の組織の引用ではうまくいかない。
この本に書かれているように、どのように「クレド」を作成するとうまくいくか、価値観の共有ができるかが大事になります。

スタッフの評価制度

みなさんの施設では、評価は、どれくらいの期間で実施していますか?
半年に1回?1年に一回?
適切な期間は、実は○ヶ月。(答えは本で。笑)
そして、評価の基準は「思考と行動」であり、そこに「感情」を乗せてはいけない。
この理由も書かれていて、納得できました。
さらに、評価は、上司と部下という関係の中で行われがちだが、日常的にスタッフ同士で評価をし合うことも書かれている。
この際、重要なのは「悪い評価」ではなく「良い評価」にフォーカスするということ。
「良い評価」を日常的に実践できる方法が紹介されています。
これによって、3年間で1人も退職者がいないどころか、退職予定の人がいたら声をかけてほしいという求職者がいるほどだという。

この本では、「非金銭的な報酬」と表現されていますが、お金ではない報酬の重要性は、近年ますます増しているように感じています。

マニュアルの重要性

マニュアルがない介護施設も多いと聞きます。

私自身も、何度か単発バイトで介護施設で働いたことがありますが、マニュアルがないのに「うちのやり方」を暗黙の了解で求められるから、すごくやりにくいことがありました。

例えば、「○時までに利用者の食事を作って、もし時間が余ったらキッチンを掃除する」ということを指示された時に、
・調理用具は肉や野菜などで分けているのか、消毒などの決まり事はあるのか
・「とろみをつけて」と言われたが、どの程度のとろみなのか
・お盆の上の配置はいつもどうしているのか
・生ゴミはどのように捨てることになっているのか
・お盆は拭いて重ねていいのか、互い違いに重ねるか立てかけるなどして乾燥させた方がいいのか
・キッチンの掃除というのはシンク内のことを言っているのか、床なども含まれているのか
などなど、その施設毎にやり方が違う。
しかし、その施設のスタッフは、もう身についているため何の疑問もなく「食事を作る」「キッチンを掃除する」と言うのですが、そこにはたくさんの要素があるんです。
マニュアルが一切ないと、慣れていないスタッフは困るし、それをすべて口頭で伝えるスタッフも時間と労力を要する。
さらには、人によって言うことが違うとなると、困惑する。
これは、思い当たる節がある人も多いのではないでしょうか。

この本でも、マニュアルがないとどういうことが起こりうるのか、どのようにマニュアルを活用したら良いのか(マニュアルが存在していても、活用されていなければ意味がない)、マニュアルの見直しの大切さが、実例を挙げて解説されています。

採用広告

採用広告での失敗談が書かれています。
よく使われているキャッチフレーズ「アットホーム」「家族のような」という言葉が与える印象や、採用広告が誰にとってどのようなものである必要があるか。
そしてホームページの重要性。

介護施設のホームページは、時代が止まっているような外観のものが多く、更新日が数年前というものをよく見かけます。
私の個人的な意見ですが、このようなホームページは、マイナスイメージでしかないと思います。

介護職に限らず、「広告」というもの全般に活用できる内容です。

私自身も、今年8月に、医療福祉の有資格者とそのサポートが必要な人が、つながり合い、助け合えるプラットフォーム「さぽんて」というサービスを開始したばかりで、まさに広告についても試行錯誤しているところです。
採用とは多少異なりますが、転用させて再検討しようと思うことがいくつかありました。

スタッフのマネジメント・自分自身のマネジメント

とても重要なことが、太田さんという登場人物や、主人公カズ自身の事例で解説されているのですが、私の言葉に変換すると軽くなってしまうような気がするので、ぜひ本を読んでください。

「安全第一」という理念は良いのだろうか?

安全であることは大事であるが、安全が「第一」になることは、介護施設として良いことなのだろうか。
よくTwitterでも議論されているのを見かけます。
「安全第一」という言葉が先行して、介護の本質が見えなくなってしまうケースは、たびたび見受けられますよね。
医療や介護の現場にいる人にとって、身に覚えのある方がほとんどだと思います。
「安全第一」という言葉を浸透させることではなく、「安全第一」とはつまりどういうことなのか、定義を共通認識しておくことが、大切ですね。

「見える化」「劣後順位化」「共通言語化」

とても大事なポイントだと思いました。
介護の現場だけでなく、現代は、複業している人が多くいます。
複業しようと思って行動を始めた時期の人や、事業をもう一つ増やした時期の人にも、「見える化」「劣後順位化」「共通言語化」ができていないがために、「(何に忙しいのかわからなくなってきているけど)忙しい」「やることがありすぎる」「○○さんに頼んだけど、頼んだことがなされない」ということが多発します。

まさに、私(笑)
早急に解決しなければいけない課題がここにありました。

なぜ、これらが必要なのか、具体的にどんなことをしたらいいのか、わかりやすく書かれていました。

桃太郎

桃太郎の登場人物を例に、組織内における役割が解説されています。
そしてその役割は、常に同じではない。
環境・場面・メンバーによっても変わる。
花火大会の事例は、とても興味深かったです。
この桃太郎理論を参考にしてチームを俯瞰して見てみると、相手の言動を客観視でき、その時々の自分の役割が見えてくるように思いました。

こんな方におすすめ

・職場環境の改善をしたいと思っている方
・介護職の役職についた方
・新しいことを初めた方、初めたい方
・チームづくりに課題を感じている方
・たびたびミスコミュニケーションが起きる方
・仕事重視になっていて自分自身や家族の時間を十分に取れていないと思う方

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