Twitterのタイムラインで、誰かがリツイートしていてたまたま見かけたオリィさん。
知れば知るほど興味が湧いてくる。
「サイボーグ時代」を読んでみました。
一気に読みきりました。
え!!!!!
この人の思考とやってることが面白い!!
テクノロジーとか福祉とかの本かと思ってたら、違った!
生き方の本だ!
ますます興味が湧く!!!!!
東京に行く機会もあるので、タイミングよく講演会を聞けないかなぁと思っていたところに、NPO法人 札幌いちご会から、いちご通信が届きました。
引き寄せた!
すぐに申し込んで、参加してきました。
オリィさん登場
Twitter上ではよくお見かけするオリィさんが目の前にいる!
もちろん、いつもの「黒い白衣」!
寒いからと、二枚重ね(笑)
思っていたより早口だけど、オーディエンスの興味を引く話し方をされる方だなぁと思いながら、オリィ ワールドへ引き込まれていきました。
アウトプットしよう!
多くの人がSNSを活用している時代。
「SNSはやったほうがいい!」
その理由は、
「自分が発信することによって、入ってくる情報がある。アウトプットすることで、人が集まるようになる。」
私も、Twitterを発信のために活用するようになってから、Twitterを通じて得る情報や、出逢えた人(実際に会った人は少ないが、Twitter上でのやりとりがある人が多数)が増え、さらに得られる情報の質や出逢える人が変化してきたように思います。
自分の気付きや、失敗談・成功談・経験談などなど、発信することで、他の誰かの「自分にもできるかも!」に繋がります。
★分身ロボットカフェで働いた経験談を発信すると、「私もやってみたい!」という人が増えました。当事者の声は「#分身ロボットカフェ」で検索してみてください。
★ALSの方が視線入力で描いた絵も、少し前に話題になりました。「手が動かないから絵が書けない」という概念はなくなりました。
やってみてわかることが、たくさんある
オリィさんが小学生の時、車椅子を使っている友人の車椅子を借りて遊んでいたら、大人に怒られたという。
オリィさんからすると、
視力が悪いからメガネをかける→「ちょっと貸して〜」とかけてみる
と同じ感覚でした。
身近に車椅子の友達がいたり、実際に乗ったことがあったりすると、危険性も体感しています。
高校時代に開発した車椅子には、傾斜のある場所を通る時に、体幹の筋肉がない人が乗っているとずり落ちてしまうという危険性を知っているので、傾斜のある場所でも車椅子に乗っている人は傾かないように設計したそうです。
この発想は、実際に車椅子を利用している人と同じ目線で過ごしたことがないと、高校生では気付けないことではないかと思います。
オリィさんの講演を聞いていて、節々に感じたことは、“私たちは医療職者としてのフィルターをかけて物事を見てしまっている”ということでした。
オリィさんは、ALSの友人と一緒に開発をしてきているので、開発する立場にありつつも、目線は「これを活用する人」であることに、とても愛を感じます。
手足を動かせない人のために、視線で操作することができる車椅子を開発しました。
「目で動かすのは危険」と多くの人が思うでしょう。
でも、それは思い込みであって、実際にやってみたら安全に動かすことができるということがわかりました。
インターンの子が、ALSの父親に使ってもらいたいということで試そうとしたところ、人工呼吸器などを搭載できるようなオーダーメイドの車椅子に乗っていて、視線操作する車椅子に乗って操作するということが難しいし、オーダーメイドの車椅子に設置することも難しいということが判明!
そこで、ホームセンターで木材を買ってきて、オーダーメイドの車椅子ごと乗れる台車を作成して、台車の支柱に視線操作の画面と固定したところ乗れました!と、画像を見せてくれました。
こういうことができたらいいね!
どうやったら実現できるだろうか?
やってみよう!
うまくいかない。
こうやってみたらどうだろう?
できた!
という連続が、無数にあることがわかります。
「成功は失敗の先にある」
「失敗は成功のもと」
という言葉があるように、試行錯誤がたくさんあることがうかがえますよね。
「そんなことは無理」「実現は難しい」と考えるよりも、やってみよう!そうすると道は開ける!というメッセージが伝わってきました。
分身ロボット OriHime オリヒメ
オリィ研究所で開発されている分身ロボットOriHimeは、
外出が困難な人の身体を運ぶのではなく、心を運ぶ
という素敵なコンセプト。
オリィさん自身が不登校になり孤独を経験してるので、
どうすれば人類の孤独を解消できるのか
という事にエネルギーを注いで開発したのが、分身ロボットOriHimeなのです。
不登校のエピソードは、著書「サイボーグ時代」に書かれているので、割愛しますね。
ぜひ読んでいただきたいです。
なぜロボットをつくることになったのか
不登校からの脱出のきっかけになったのが、ロボット。
器用に折り紙を折るオリィさんに、母親が「折り紙ができるからロボットも作れるでしょ?」とロボットの大会に勝手に申し込んでいて、大会に参加することになったことがきっかけ。
オリィさんのお母さんの発想と行動も素晴らしいですよね。
自分でロボットを作って大会に参加することで、オリィさんは、努力は報われるということと、くやしさが次のエネルギー源になるということを知りました。
「出会いと憧れで人生は変わる」
ロボット作りを始めたことで、久保田師匠と出逢い、「この人に弟子入りしたい!」という気持ちが芽生えて、工業高校に入学することにしたそうです。
「こうじゃなきゃいけない」ということが嫌いで、
じっと座って授業も受けられず、
意思に反してさせられること嫌いなオリィさんは、
いわゆる「勉強」をしてきていませんでしたが、
久保田師匠との出逢いによって変化しました。
久保田師匠との出逢いで、ロボット開発が楽しくなり、
JSEC(高校生科学技術チャレンジ)やISEF(インテル国際学生科学フェア)に参加することによって、「オレの研究はオレの人生」と語る世界中の高校生と出逢い、
「自分の人生をかけるべき事はなにか」を考えるようになりました。
メディアに取り上げられると、高齢者からの悩み相談を受けるようになったのですが、
企業では「うちはそいういうことはやっていない」と断られ、「あなただったら作ってくれるのでは」という相談ばかりで、
オリィさんは「車椅子をつくっていたけれど、車椅子を使って生活している人のことを知らない」ということに気付きました。
そして、「世の中は、未完成なことが多い。それなら、こんな自分でもできることがあるかもしれないという勘違いが自分の人生を変えました。」と話していました。
人と出逢うことでご自身が変化し、様々なロボットをつくりながら人と人の間にしか「癒し」はないということに気付いたオリィさんのスピーチには、テクノロジーが人の仕事や役割に取って代わるのではなく、選択肢を増やして自分らしく生きられるようにテクノロジーも活用しようという芯がしっかりあって、「こんなことがやりたいんだ!」ということがしっかり伝わってきました。
「できない」ということは最先端
この言葉には、私の思考回路が一時停止しました。
たしかに!!
手が不自由な人が困難だと思うこと、こんなことができたらいいなと思うことは、手が不自由な人にしかわからない。
言葉での意思表示ができない人にしか、直面する壁や必要なツールがわからない。
その分野での最先端は、いわゆる健常者ではなく、当事者であるということ。
医療職者、福祉用具開発者、医療福祉施設の設計者、医療福祉サービスの考案者・提供者などは、当事者ではないことがほとんどです。
ゆえに、当事者が求めていることとギャップが生まれてしまうということが多々ありますよね。
改めて、ハッとさせられました。
OriHimeや視線操作車椅子など、オリィ研究所で開発されているものは、すべて、当事者の声が元になっていて、開発者ではなく当事者が主役になる開発ばかり。
「心が自由であれば、どこへでも行き、なんでもできる」
この言葉は、オリィさんの親友 番田雄太さんからのメッセージです。
番田さんは、4歳の頃に交通事故にあい、24歳まで病院のベッドの上で生きてきました。
学校に行ったこともないので友人もいない、病院内の同世代の子供達は死んでいく、心は元気なのに何もさせてもらえない。
オリィさんと出逢い、OriHimeと出会いました。
OriHimeを連れて行ってもらい、自宅のベッドからOriHimeにアクセスすると、世界中どこにでも行けます。
身体の移動はできなくても、OriHimeを活用することで、心を運ぶことができます。
そうすると、全国に友人ができて外出する理由ができ、寝たきりだったからこそのアイディアがオリィ研究所に活かされていくので、存在意義を自覚していきます。
必要とされる
↓
もっと必要とされたい
↓
人はどんどん変化していく
「生きる意味とは、人と繋がることで生まれる」とオリィさんが話していました。
人と違うということは、これからの時代は「価値」
新しいことをやろうとすると、友人は離れていく。親には反対される。
でも、多くの人が「いいね」ということは、新しくない。
理解者が少ないから新しい。
新しいことは、反対されるもの、仕方ない。
オリィさんのトレンドマークとなっている「黒い白衣」も、最初は友達がドン引きし、親からも実家近辺では着ないでくれと言われるほどだったそうです。
今では、「黒い白衣」を買いたいという要望が多数寄せられるものになっています。
昔は、集落社会だったので、「人と違う」ということが生きにくくなる時代もあったけれど、現代は、ネット社会やコミュニティーも多くあるので、生きにくいのなら居場所は自分でつくればいいと話すオリィさんの言葉には、説得力があります。
「ありがとう」を言いすぎると「すいみません」になる
肢体不自由な方は、「やってもらっているのに、何もしてあげられない」という思いから、「ありがとう」が次第に「すみません」「申し訳ない」になっていってしまいます。
人は、謝る時は、自分らしさを失ってしまいます。
OriHimeは、身体が動かなくても、
どこにでも行ける
アイディアを伝えることができる
仕事をすることができる
人を笑わすことができる
OriHimeを通じて誰かの役に立つ経験をすることで、生きる意味を見出す人が多くいます。
OriHimeを使って働いている人の現状と未来
身体障害者のためにと開発されたOriHimeですが、
「障害」とは、「障害者手帳があるかどうかではなく、困っていることがあるかどうか」という認識のもと、様々な場面で活躍しています。
★分身ロボットOriHimeカフェ(ニュースやSNSでも話題になってます)
地方の人でも、東京の時給で働けます。
体調不良での急な欠勤でも、出勤するわけではないのですぐに代わりの人が見つかります。
★育児中に、自宅からOriHimeにアクセスして勤務できる。
NTT東日本では、66体のOriHimeが活用され、育児中のお母さんが働いているそうです。
★ストレッチャーでの旅行では、誰も目を合わせてくれないけれど、OriHimeなら目を合わせて話しかけてくれる。
★寝たきりの祖父が、OriHimeで孫の結婚式に参加できた。
★時差を利用すると、世界中の「昼間」で、24時間営業も可能になる。
★農家の人が、農業をしながら、野菜売り場で売り子もできる。
などなど、「困っていること」を解決するために、OriHimeが活躍しています。
医療職者ができること
質疑応答で、医学生が、医師に求めることは何かと質問していました。
オリィさんもたくさんの医療職者との関わりの中で、「治療をするということが仕事」と前置きしつつ、「頭はいいけれどITには弱い」「ツールを知らない」と、医療職者の課題があることを話していました。
これは、Twitter等でもよく見かける課題でもあります。
医療現場での「勤務」しかしていない人は知り得ないことが、世の中では繰り広げられています。
OriHimeも、職場で話しても、会話になる人が1人いるかどうかというレベルじゃないでしょうか。
OriHimeに限らず、医療福祉に携わる人が、医療福祉以外にも関心を持ち、自分らしく生きるための支援を提案できるようになると、もっと良い環境をつくれるのではと思います。
また、若年層のほうが、新しい発想を持っていることも多々あります。
私たち看護師の分野でも、「経験年数が長い人が言うことが絶対」「経験年数が長い人の方が正しい」という風習がありますが、若い人の方が新しいことに対応する能力があったり、医療だけに凝り固まっていない脳みそで考える力があったりもします。
長く医療に携わっている人こそ、外に目を向ける必要性が増す時代に突入しているように思います。
オリィさんの講演を通して、
「やりたい」ということを突き詰め、「やりたい」ことだけをやって、「やりたい」を実現する。
「テクノロジーでどんなことができるか」ではなく「テクノロジーで何がしたいか」に重きを置いて開発している。
世の中からどう見られるか、業績を残せるか、ではなく、「人の孤独を解消したい」「現場に役に立つものをつくりたい」というブレない熱意。
とても伝わってきました。
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